
「弁護士は儲からない」って本当?仕事がないといわれる背景や真実・将来性を分析
近年、社会の変化に伴い、「弁護士は儲からないのでは?」「弁護士に将来性はあるのか?」と漠然と不安を感じている人もいるのではないでしょうか。
結論を言うと、「キャリアプランをしっかり考えていないと、稼げない弁護士になってしまう」といえます。
これについて詳しく検討するために、この記事では、
について解説します。
この記事を最後まで読めば、稼げる弁護士になるために必要なことがよく分かるはずです!
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目次
「儲からない」といわれている背景
弁護士人口の増加
弁護士人口は年々増加し続けています。
日本弁護士連合会が発行する弁護士白書によると、2023年時点で弁護士数は44,916人となっています。

参照:弁護士白書 2023年版
法務省が1999年ごろから取り組み始めた司法制度改革により、毎年500〜1,000人程度であった司法試験の合格者数は、1,500人程度まで増加しました。
司法試験合格者数の増加を背景に、弁護士の人口も年々増加し続けています。
この弁護士数の増加に伴い、「必然的に仕事がない弁護士もいるのではないか」、「弁護士が儲からなくなってきているのではないか」という声が一部で挙がるようになりました。
しかし実際には、弁護士全体の収入が下がっているというよりも、仕事が少なく収入が低い弁護士も一部にいるというのが正しいと思われます。
専門分野の細分化
弁護士数の増加に伴い、弁護士業界では差別化を図り競争に勝ち残るために、特定分野への専門性を高める潮流があります。
最近では、取り扱う案件を特定分野に絞り専門性を売りとする「ブティック系法律事務所」が増えていたり、法律事務所単位で見ても、セクション制を敷いて分野別に専門チームを組織する体制が増えたりしています。
一方、専門分野の細分化が進むことで、以下の2つのリスクがあります。
専門分野の細分化のよるリスク
- 専門分野以外の経験を積みにくく、キャリアの幅が狭まる可能性がある
- 特定分野の需要変動の影響を受けやすくなる
特定分野への専門性を高めることは市場価値を高める方法のひとつです。しかし、専門分野以外の案件に携わる経験が積みにくいといったデメリットもあります。
特にキャリアの初期段階で特定分野に特化してしまうと、未経験分野に転職する際には新卒と同等の評価となってしまい、キャリアの幅が狭まってしまう可能性があります。
また、特定分野へ特化したキャリアは、その分野の需要変動の影響を受けやすいと言えます。
実際過去にあった「過払い金バブル」の事例のように、事件数の減少や社会情勢の変化により専門分野での案件需要が無くなれば、どれだけ専門性を持っていても仕事が減ってしまうことになるでしょう。
これらのことから、「今自分が関わっている専門分野の将来性は大丈夫か」といった不安を抱える弁護士が増えていると考えられます。
弁護士に将来性はある?
弁護士が「儲からない」といわれる理由をご紹介しましたが、決して弁護士に将来性がないというわけではありません。むしろ、弁護士は大変将来性のある業界といえます。
その理由の裏付けとして、弁護士業界の傾向があります。そのため、ここでは弁護士業界の動向から将来性について解説していきます!現在の業界動向を要約すると、以下のようになります。
近年の弁護士業界動向
- キャリアの選択肢が増えている
- 年収の格差が以前よりも拡大している
- 地域による弁護士分布の偏りがある
キャリアの選択肢が増えている
元来、弁護士のキャリアパスは法律事務所への入職が主でした。しかし現在は、企業の法務部で活躍する企業内弁護士(インハウスローヤー)や企業経営層で法的視点から経営に関わるCLO、GCといったキャリアが勢力を拡大しています。
ここから企業内弁護士、CLO・GCについて簡単に説明します。
企業内弁護士(インハウスローヤー)
企業内弁護士とは、企業から直接雇用されて企業法務に携わる弁護士です。
コンプライアンス意識の高まりやグローバル化などの影響で、企業活動における法務リスクが多様化・複雑化してきています。こういったリスクに迅速に対応するために、社内に弁護士を確保しておきたいという企業側のニーズが高まっているのです。
日本組織内弁護士協会の調査によると、下図のように企業内弁護士の人数は右肩上がりに増加し続けています。
ワークライフバランスが取りやすいことから、女性の割合が高いことも特徴です。

参照:日本組織内弁護士協会「企業内弁護士の男女別人数」
企業側の採用ニーズは依然として存在しており、企業内弁護士は今後も増えていくことが予想されます。
企業内弁護士について、詳しくは以下の記事で解説しているので、こちらも合わせて読んでみてください。
合わせて読みたい記事はこちら
CLO、GC
欧米企業では、CLO(チーフ・リーガル・オフィサー)やGC(ジェネラル・カウンセル)といった名称で法務人材が経営層に在籍している事が多いです。グローバル化が進む現在、このトレンドが日系企業にも波及し始めています。
グローバルでのガバナンス体制を構築するために、法的視点から経営に携わる役割としてCLOやGCの必要性が高まっています。
今後さらにCLOやGCといったポジションの創出が進むことが予想され、企業内弁護士が目指すキャリアパスとしてプレゼンスが高まることが考えられます。
これらのような新たなキャリアへニーズを拡大している弁護士業界の将来性はまだまだあるといえるでしょう。
年収は全体として下がっているわけではない
日本弁護士連合会の調査によると、弁護士の所得合計の全国平均値は1,119万円、中央値は700万円でした。(2020年時点)
2010年の調査では平均値が1,471万円、中央値が959万円だったので、10年間でいずれも減少していることが分かります。
このようになっている要因としては、弁護士内での所得格差が広がっていることが挙げられます。
以前に比べて供給が過多になっている分、競争が激しく収入が少ない弁護士も出てきているというわけです。
とはいえ、依然として大手事務所などでは年収が高く、弁護士全体として年収が下がってきているというわけではありません。この点においても、将来性がないということは難しいでしょう。
後ほど、稼げる弁護士になるためのキャリアプランについて解説しています。こちらのキャリアプランを参考にすることで、稼げる弁護士へ一歩近づくことができるでしょう。
地域による弁護士分布の偏りがある
現在弁護士人口は、都市部に大きく偏在しています。
弁護士会別で見ると、日本の弁護士人口のおよそ半数である約2万人が東京の弁護士会に所属しています。
その次に、大阪が約4,900人、愛知が約2,100人、神奈川、福岡、兵庫と続きます。(※)
このように弁護士人口の半数以上が都市部に集中しており、案件数に比べて弁護士数が過多である状況があります。
一方で、地方では弁護士が足りていないところもあり、全国的に見ると弁護士分布はまだ大きく偏りがあるのが現状だと言えます。
※弁護士白書 2023年度版(参照:2024.9.24)
AIに仕事を奪われる?
AIが登場したことで、あらゆる職業においてAIに仕事が奪われないかどうかの議論が起こっています。それは弁護士という職業においても同様です。
しかし結論から言うと、現状では弁護士の業務がすべてAIに淘汰されるということは考えにくいです。
ここからは、弁護士の業務ごとにAIとの関係性から将来性について評価します。
裁判・法廷での訴訟活動
弁護士の主要業務である裁判や法廷での訴訟活動においては、弁護士の人間的な戦略判断や洞察力が不可欠です。
AIは裁判事例の調査や証拠の収集には役立つかもしれませんが、それらをもとに弁護士がケースの状況を総合的に判断して法廷での戦略を立てる必要があります。
法的文書の作成および証拠の調査・収集
単純業務の効率化はAIの得意領域です。大量の契約書データを学習させることで、法的文書の作成やチェック業務を効率的に行うことが可能です。
法的トラブルの相談対応・法的アドバイスの提供
AIは論理的判断を得意とし、過去の事例を学習させることで法的アドバイスを提供することは可能でしょう。
しかし、新たな事例などにおいては不確実性が高く、結局個別の事例に対し法に基づいて適切なアドバイスを提供するためには、人間である弁護士の判断が必要です。
交渉・和解の代行
交渉や和解においては、人間関係や感情の要素が大きな役割を果たします。これには弁護士の人間的な戦略判断や洞察力が不可欠です。
以上からまとめると、一部AIが得意とする業務はあるものの、訴訟活動や交渉・和解といった人同士の間で行う業務においてはやはり弁護士の存在は不可欠であることが分かります。
すべての業務がAIに取って代わられることは考えにくいでしょう。
むしろ、AI技術を活用してリーガルテックの領域が発展することで、弁護士の活躍の幅はますます広がるのではないかとも考えられます。
稼げる弁護士になるためのキャリアの考え方
ここまでで解説してきた通り、競争が激しく社会の需要も刻々と変化する中で、弁護士のキャリアは多様化が進み専門性を増しています。
こういった状況のなか、稼げる弁護士になるためにはどうすればよいでしょうか?
必要なのは、「転職ありきで弁護士としてのキャリアプランを具体的に考える」ことです。
昔のように、弁護士資格を取っただけで高収入が担保されるとは言い切れません。弁護士になった後、どのようにキャリアを歩んでいくかをしっかりと計画しておくことがとても大切になります。
以下では、キャリアの考え方について2つご紹介します。
ファーストキャリアはできるだけ幅広い分野に関われる準大手事務所がおすすめ
先述した「儲からない」と言われている背景のコラムでも触れたとおり、キャリア初期から特定の分野に専門性を絞るのはあまりおすすめできません。未経験分野に転職しようとすると新卒と同等の評価となってしまい、キャリアの幅が狭まる可能性が高いからです。
そのため、ファーストキャリアではできるだけ幅広い分野に関われる法律事務所へ入職するのがおすすめです。
準大手の事務所であれば、案件の種類も多く大手ほど組織が細分化されていないため、幅広い分野に携われる可能性が高いと言えるでしょう。
トレンドである分野のスペシャリストになる
将来的に専門性を高めていくことを想定したうえで、社会でトレンドとなっている分野や今後需要が伸びると予想される分野での専門性を極めることはとても重要です。
実際に現在だと、AIやIT技術の発展に伴い「リーガルテック」という新たなマーケットが開拓され始めています。その他にも詐欺や労働問題など、時代に合わせて弁護士需要のトレンドも変化しています。
弁護士内での競争が激しくなってきているなかで、特定分野での専門性は周囲との差別化につながり市場価値を高められます。
その際に、斜陽分野ではなくトレンドとなる分野を極められるようにキャリアプランを策定することが重要です。
転職をするなら業界専門のエージェントを利用すべき
弁護士内での競争が激しくなってくる今後も、弁護士としてしっかりと稼いでいくためには、転職を見据えてキャリアプランをきちんと策定することが重要です。
そのようなキャリアプランの策定の際に、業界専門の転職エージェントを利用するのがおすすめです。
業界専門のエージェントを利用すると、弁護士の転職市場に精通したアドバイザーからマンツーマンでキャリアについてアドバイスをもらうことができます。
そこまで転職を考えていなくても、「今後のキャリアプランについて無料で相談できるツール」として活用することができます。このタイミングに、転職エージェントの活用をぜひ検討してみてください。
弁護士におすすめ転職エージェント
- 1人のエージェントが求職者と企業側の双方とやり取りする「両手型エージェント」
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