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POSTED
2024年2月16日
UPDATE
2024年3月5日

弁理士とは?理系最高峰の資格と評される弁理士の仕事内容や年収、目指し方まで解説!

知財・弁理士 職種の紹介

弁理士という言葉は知っていても、実際に弁理士がどんな資格でどんな仕事をしているのか分からないという方もいらっしゃると思います。
そんな方に向けて本記事では、弁理士の仕事内容や年収、弁理士のなり方、向いている人の特徴などをご紹介します。弁理士について知りたいという方はぜひ参考にしてみてください。

弁理士とは

弁理士は、知的財産権のプロフェッショナルです。知的財産権を取得したい企業や個人のために、代理で行うのが主な仕事となっています。また、知的財産の専門家として、知的財産権の取得についての相談をはじめ、知的財産権に関するアドバイスやコンサルティングなども弁理士の仕事です。
理系出身の学歴や経歴、開発職などの経験が活かせる仕事で、将来性が高い点が魅力的な仕事です。

知的財産とは

人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、 財産的な価値を持つものがあります。そうしたものを総称して「知的財産」と呼びます。 知的財産には、発明、音楽、営業秘密などの無体物も含まれます。
その知的財産を保護するための特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの権利が「知的財産権」です。

弁理士の仕事内容

弁理士の仕事は大きく3つに分かれます。

知的財産権の取得

弁理士は、クライアント(企業)が知的財産権を取得したい時にそのサポートをします。
知的財産を権利化するには特許庁への申請が必要であり、弁理士は特許庁に提出する特許明細書の作成や手続きを代行します。申請する知的財産のオリジナリティや正当性を適切に伝えるための専門知識が求められます。
さらに、意見書・補正書の作成などの拒絶理由通知への対応といった業務も必要となります。

知的財産権に関わる訴訟・紛争などの解決

弁理士は、知的財産に関わる訴訟や紛争の解決もサポートします。

例えば、ある企業の特許庁に登録している知的財産権が、他者に許可なく使用されている場合、その企業は交渉や訴訟など解決に向けて対処しなければいけません。その際に弁理士は、知的財産のプロフェッショナルとして、クライアントのサポートや代行をします。
逆にクライアントが相手側の企業や個人に権利侵害を指摘された際に、弁理士がサポートするケースもあります。

裁判外で紛争解決する場合もあります。その際には日本知的財産仲裁センターが行う裁判外紛争解決手続を弁理士が行います。

知的財産コンサルティング

弁理士は、クライアントに対して知的財産に関わるコンサルティングをすることもあります。よくあるパターンとしては、企業が有する知的財産の活用をどのように経営戦略に活かすのかをクライアントにアドバイスするといった業務があります。知的財産権を上手く活用することは、企業の利益や将来性に大きく関わるため、重要なコンサルティングと言えます。
また、知的財産部がない企業に対して知財部の立ち上げを実施するといったコンサルティングを行う場合もあります。

弁理士としての就職先

主な仕事内容は上記の通りですが、就職先によって、実際の業務内容も変わります。弁理士としての働き方には、以下のような就職先があります。

特許事務所

弁理士の就業先として最も多いのが特許事務所です。特許事務所でメインとなる業務は、知的財産権取得のための特許出願手続きに関するものです。

一般的には、事務所の規模が大きくなるほど、扱う技術分野の幅が広がり、分業制になる傾向です。知的財産権に関わる紛争解決や知的財産コンサルティングの業務も行う特許事務所もあります。転職・就職する際には、その特許事務所がどんな分野の業務を行っているのか確認すると良いでしょう。

日本弁理士会の会員分布状況によると、弁理士のうち約70%が特許事務所で働いています。(参照:日本弁理士会「会員分布状況 2023年12月末」

企業知財部

弁理士の就職先として、企業の知的財産部が挙げられます。

知財部は基本的に、自社の製品・サービス・技術などの知財関係を取り扱うことが多いです。具体的には自社製品の権利化業務や、特許侵害排除業務をメインに行います。また、自社の知的財産の活用に関する戦略を策定する業務を行うこともあります。
特許事務所・法律事務所に比べ、給料は低めな印象ですが、福利厚生や手当が充実していることが多い点が魅力的です。

日本弁理士会の会員分布状況によると、弁理士のうち約25%が企業で働いています。(参照:日本弁理士会「会員分布状況 2023年12月末」

法律事務所

知財分野の案件を扱う法律事務所も、弁理士の就業先となり得ます。知財分野の案件の場合は、弁理士の専門知識が必要となるためです。
特許事務所と同様に、出願業務をメインとしていることが多いですが、事務所によっては、鑑定や知財コンサルなどを行う場合もあります。
また、弁護士と協力して知的財産権に関わる訴訟・紛争などの解決を行う業務もあります。

独立開業

弁理士として、自身のキャリアや人脈を築き上げれば、特許事務所や弁理士法人を独立開業することも可能です。

独立開業することは、大幅な年収アップや自身の裁量で経営方針を決め、業務を遂行できるといったメリットがあります。
ですが、自らクライアントを獲得したり、運営面の業務もこなさなければならないといったハードルがあります。まずは、特許事務所や企業に就職・転職して弁理士としてのスキルや人脈を築くのが良いでしょう。

日本弁理士会の会員分布状況によると、弁理士のうち主たる特許事務所・弁理士法人の経営をしている方は約34%です。(参照:日本弁理士会「会員分布状況 2023年12月末」

弁理士の年収【理系職種で比較】

弁理士の平均年収は、700~750万円と言われています。国税庁によると、日本の平均年収は458万円であり、比較すると弁理士の年収は高給であると言えます。
以下の表は、他の理系職種と比較したものです。

職種平均年収
医師約1,000万円以上
大学教授約1,000万円
弁理士約700万円
データサイエンティスト約654万円
研究開発職約533万円
1級建築士約500万円
薬剤師約498万円
ITエンジニア約480万円
獣医師約435万円
技術士約409万円
参考:求人ボックス 給料ナビ

理系職種と比較しても、弁理士の年収は高いと言えます。

また、弁理士の700~750万円という平均年収は、特許事務や弁理士法人を経営している方たちを除いたものです。経営者クラスになると年収1,000万以上も珍しくありません。実際、経営者クラスまで含めた弁理士の平均年収は945万円となっています。(参考:厚生労働省「令和3年度 賃金構造基本統計調査」

弁理士の将来性

弁理士の仕事は将来性が高いと言えます。新しい発明・開発が生まれる限り特許は無くならないためです。実際、ここ数年の日本での特許出願件数は、おおむね横ばいで安定しています。(参照:特許庁 「特許行政年次報告書2023年版をとりまとめました」

さらに、日本の特許庁を受理官庁とする特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数については、2013年当時は4万3,075件でしたが、2022年は4万8,719件と増加しています。(参照:特許庁「国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状」

これは、研究開発や企業活動のグローバル化が大きく進展していることを表していて、英語力のある弁理士の需要がより高くなっていくと考えられます。
また、専門知識が求められる弁理士の仕事は、AIによる代替や異業種からの参入が難しい点も将来性が高いと言える要因です。

弁理士は今、ブルーオーシャン

上述したように、将来的にも弁理士の需要は高いままであると予想できますが、2023年12月末時点で弁理士の平均年齢は、約53歳と高い状況です。(参照:日本弁理士会「会員分布状況 2023年12月末」

45〜60歳が最もボリュームのある層となっています。したがって、20〜40代の弁理士の需要が非常に高い状況であり、就職や転職がしやすい市場となっています。

それに対し、弁理士の志願者数は2008年を境に年々減少しています。つまり、ライバルが減っていると言えます。(参照:特許庁「弁理士の人数・志願者・合格者推移」

弁理士に向いている人の特徴

ここでは、弁理士に向いている人の特徴を3つご紹介します。

好奇心が強く、新しいものに興味を持てる人

弁理士は、新しいアイディアが世に出る前にいち早く目にすることができます。新しいものに触れることで知的好奇心を満たし、仕事のなかに楽しさを見出せる人にとって、弁理士は天職と言えます。

また、近年日本から他国への出願、他国から日本への出願の件数が増えており、事務所によってはグローバルな案件に関わることも多くなるでしょう。世界に影響するような新たなアイディアにいち早く出会える可能性もあります。

論理的に説明できる人

物事を論理的に考え、説明できる人は弁理士に向いています。

弁理士の業務では、審査官や裁判官、交渉相手や訴訟相手などの相手に対して、自分の主張を通さなければならない場面がしばしばあります。その際に相手を納得させるためには、根拠に基づいた説得力のある議論をすることが不可欠です。
また、弁理士のメイン業務である特許申請の際には、対象となる技術について文章で論理的な説明をすることが求められます。

情報収集が苦にならない人

情報収集をし、それらをまとめることが得意な人は弁理士に向いています。

弁理士の業務として、特許出願書類・明細書の作成がありますが、この書類を作成するためには、情報を収集してまとめる力が必要不可欠です。
明細書は特許申請する新たなアイデアの技術に関する知識・商品発売の背景・市場の動向などを理解し、このアイデアがどれほど新しいものなのかを書面にまとめます。
未知の技術や新規の発明を扱うため、自分の知らない情報もあります。広く情報を集め、それらの情報を的確にまとめる必要があります。

弁理士資格を取得する流れ

弁理士になるためには、毎年1回行われる弁理士試験に合格し、弁理士登録をする必要があります。流れとしては、弁理士試験→実務修習→弁理士登録となります。

弁理士試験

まずは、国家試験である弁理士試験に合格する必要があります。弁理士試験は受験資格に制限はなく、希望すれば誰でも受験できます。弁理士試験は「短答式」・「論文式」・「口述試験」の3部から構成されています。

弁理士試験は5月に1次試験の短答式、7月に2次試験の論文式、10月に3次試験の口述式が行われ、論文式試験は短答式試験に合格した者、口述試験は論文式試験に合格した者に行われます。

「短文式」・「論文式」に合格すると、「口述試験」で不合格となった場合でも、申請すれば次回の「短文式」・「論文式」の筆記試験は免除されます。

実務修習

弁理士の実務修習とは、弁理士試験合格後、登録を行うために実践的なことを学ぶ研修です。実務修習の受講をしないと、弁理士登録はできません。

弁理士の実務修習は、経済産業大臣から指定を受けた機関で受けます。例年11月上旬から中旬にかけて申込が行われ、12月上旬から3月末の間に実施されます。

弁理士登録

実務修習を受けたら弁理士登録が可能となります。弁理士登録には、いくつかの書類や登録費が必要となります。ミスがないように、期日に余裕をもって準備することをおすすめします。

その他の弁理士のなり方

弁理士資格を取得する方法は弁理士試験に合格する方法が一番主流ですが、それ以外にも弁理士資格を取得する方法があります。

弁護士資格を取得する

弁護士資格保持者は、実務修習を受けることで弁理士登録ができるようになります。

特許庁での審判官もしくは審査官・審査事務に7年間従事する

特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる方も、実務修習を受けることで弁理士登録ができるようになります。

弁理士試験の難易度

ここでは、弁理士試験の難易度を解説します。合格率が低いことや必要な勉強時間が多いことから、弁理士試験の難易度は高いと言えます。

弁理士試験の合格率

下の表は、過去5年分の弁理士試験の合格率、受験者数、合格者数を示したものです。

年度合格率受験者数合格者数
2019年度(令和元年度)8.1%3,488人284人
2020年度(令和2年度)9.7%2,947人287人
2021年度(令和3年度)6.1%3,248人199人
2022年度(令和4年度)6.1%3,177人193人
2023年度(令和5年度)6.1%3,065人188人
5年間の平均約7.2%約3185人約230人
参考:特許庁

過去5年間の平均合格率は、約7.2%となっています。この数値は他の国家資格と比較しても低くなっていて、弁理士試験の難易度が高いことを示しています。

弁理士試験の学習時間

弁理士試験に合格するために必要な学習時間は、3000時間と言われています。仮に学習時間を1日5時間確保したとしても、約2年間かかるということになります。しかし、この3000時間という数値は目安であり、どれほど高い質で学習したのかということも重要です。働きながら1年間で合格する方もいらっしゃいます。

1年間で全て合格する必要はない

弁理士試験は「短答式」・「論文式」・「口述試験」の3部から構成されていて、全てに合格することで弁理士試験に合格できます。これら3つの試験を1年間で合格する必要はありません。「短答式」に合格し、その後の「論述式」で不合格となった場合、申請すれば次回の受験では「短答式」の試験は免除されます。「論述式」についても同様です。

したがって、複数年かけて弁理士試験に合格する方も多数いらっしゃいます。下の表は、過去5年分各年の弁理士試験合格者の平均受験回数を示したものです。過去5年間の弁理士試験合格者の平均受験回数は、約3.6回となっています。

年度試験合格者の平均受験回数
2019年度(令和元年度)4.1回
2020年度(令和2年度)4.1回
2021年度(令和3年度)3,7回
2022年度(令和4年度)2.4回
2023年度(令和5年度)2.8回
5年間の平均約3.6回
参考:特許庁

弁理士になるまでの働き方

特許庁のデータによると、弁理士試験に合格している方は、9割以上が働いている人となっています。さらに、働きながら弁理士試験に合格した方のうち、約40%は法律事務所や特許事務所のように知的財産に関わる仕事をしています。企業の知財部で働いている方もいらっしゃるため、もっと多いと考えられます。

(参照:特許庁「令和5年度弁理士試験の結果について」

職種としては、特許技術者の方が多いようです。
特許技術者とは、弁理士の補助業務を行う職種です。具体的には、明細書作成の補助や、クライアントや発明者へのヒアリング、特許庁とのやり取りに必要な書類作成の補助などが経験できます。

こういった知的財産に関わる仕事をしながら弁理士試験合格を目指すことには、大きく以下の3つのメリットがあります。

弁理士資格を取るための時間確保がしやすい

特許事務所や企業知財部といった職場は、働いている方に弁理士になってもらいたいと考えていることが多い傾向です。弁理士にしかできない独占業務があり、十分な人材を確保したいためです。

したがって、働く時間と弁理士資格を取るための勉強時間のバランスの相談がしやすい環境が多く、十分な時間を確保しやすいです。

弁理士資格をのための費用をサポートしてもらえることがある

特許事務所や企業知財部といった職場は、弁理士資格を取るための費用や弁理士登録費用などをサポートしてもらえる可能性があります。特に特許事務所は、弁理士登録費や月会費を負担してくれる職場がほとんどです。

知財業界で実務経験を積める

知財業界では弁理士資格に加えて、実務経験も重要視されています。弁理士資格を取得する前から実務経験を積んでおくことで、資格取得後の就職や転職で有利になります。

また、資格を取る前に実際に知財業界の仕事を経験することによって、自身の適性を判断する材料になるといったメリットもあります。

弁理士を目指すのにタイムリミットはあるのか

弁理士を目指すにあたって、タイムリミットは特に気にする必要はありません。
実際に令和5年度の弁理士試験の合格者のデータを見てみると、20〜50代まで合格している方がいます。

特に特許技術者や企業知財部など知財に関わる仕事を経験している方の場合、弁理士資格取得後の就職の際に、知財業界経験者として就職活動ができます。そのため、年齢が高かったとしても即戦力として非常に需要が高いと言えます。

一方で、弁理士試験合格後に、弁理士未経験から就職することを考えると、若ければ若いほど有利になります。若い方ほど伸びしろがあり、需要が高いためです。

有利になる目安は「35歳まで」と言えます。弁理士の採用担当者は、「40歳前までには一人前の弁理士になってもらいたい」と考える傾向があり、一人前の弁理士になるためには5年必要であると言われているため、「35歳まで」が有利と言えます。ただし、未経験で35歳以上だとしても十分に需要はあります。

弁理士を目指すなら、相談することから始めてみましょう

自分が弁理士に向いているのか、目指せるのかは簡単には判断できないと思います。そんな方はまず、弁理士や知財業界について知ることから始めてみましょう。
SNSを活用したり、身近に知財業界で働いている知人がいる場合は直接話を聞いてみることでよりリアルな情報が聞けるでしょう。

また、知財業界を専門としている転職エージェントに相談してみることをおすすめします。
そういったエージェントに在籍しているアドバイザーは、知財業界で働く多くの人と接しており、知財業界への知見が深いため、的確なアドバイスを聞けます。

  • 自分に弁理士の適性があるのか
  • 弁理士・知財業界の内情やキャリアパスを詳しく知りたい
  • 弁理士になった場合、どれくらいの年収を目指せるか知りたい

といった方は、ぜひエージェントに相談してみましょう。

さらに、知財を専門としているエージェントであれば、知財に関わる仕事の紹介をうけることも可能です。
登録して相談したからといって、必ず転職しなければいけないということはありません。気軽に相談することから始めてみましょう。

弁理士・知財業界に強い転職エージェントは、以下の記事を参考にしてみてください。

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